雑穀の栄養

雑穀米の食物繊維は何g?お茶碗1杯の実数と目標量までの足し方

「雑穀米は食物繊維が豊富」とよく言われます。ただ、実際にお茶碗1杯で何g摂れるのかを書いている記事はほとんどありません。

結論からお伝えすると、白米1合に押麦を大さじ2混ぜて炊いたごはんなら、お茶碗1杯(150g)でおよそ1.7gです。白米だけなら約0.3gなので、差は約1.4g。1日3食なら約4gの上乗せになります。

多いか少ないかは目標量と比べて判断すべきですが、「雑穀米にすれば食物繊維は足りる」という水準ではありません。 この記事では、実数と目標量を並べて、どこまで届くのか・残りをどう埋めるのかまで整理します。

この記事のポイント

  • お茶碗1杯の食物繊維はおよそ1.7g。白米だけの約5倍だが、1日の目標量の1割に届かない
  • 押麦の食物繊維12.2gのうち約6.7gが水溶性。総量より内訳で選ぶ
  • 目標量は2025年版で変更(30〜64歳男性は22g以上に)
  • 成分表の測定法が変わった影響で、八訂の数値で計算すると目標量を実際より満たしやすく見える

雑穀12種の食物繊維(乾100gあたり)

まず素材の含有量です。すべて乾燥状態100gあたりの食物繊維総量です。

雑穀 食物繊維総量 白米との比
大麦(押麦) 12.2 g 約24倍
アマランサス 7.4 g 約15倍
赤米 6.5 g 13倍
キヌア 6.2 g 約12倍
黒米 5.6 g 約11倍
たかきび(ソルガム) 4.4 g 約9倍
ひえ 4.3 g 約9倍
そばの実 3.7 g 約7倍
あわ 3.3 g 約7倍
緑米 3.0 g 6倍(玄米の参考値)
きび 1.6 g 約3倍
はと麦 0.6 g 約1.2倍
精白米(うるち米) 0.5 g

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

押麦が突出しています。 そして意外なのが、はと麦は0.6gで白米とほぼ変わらないこと。「雑穀なら食物繊維が多い」わけではなく、種類による差が20倍以上あります。各雑穀の詳しい栄養は「雑穀の種類一覧」で比較できます。

総量より「水溶性・不溶性の内訳」

食物繊維は水に溶ける水溶性と、溶けない不溶性に分かれ、はたらきが違います。押麦の内訳を見てみます。

押麦(乾100g)の食物繊維
総量 12.2 g
 水溶性(低分子量) 2.4 g
 水溶性(高分子量) 4.3 g
 不溶性 5.5 g
 難消化性でん粉 0.4 g

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(AOAC.2011.25法)

水溶性が合計約6.7gで、総量の半分以上を占めます。水溶性は水を含んでとろみを作り、糖の吸収をゆるやかにするはたらきに関わります(詳しくは「雑穀米と血糖値」で解説しています)。不溶性は水分を保って便のかさを増やす方向に働きます。

両方を摂れることが押麦の強みです。一方、アマランサスなど他の雑穀は不溶性が主体になります。

お茶碗1杯あたりの実数を計算する

素材の100gあたりの数値は、そのまま食卓の数値ではありません。実際に食べる形で計算します。

前提:白米1合(150g)+押麦大さじ2(約30g)で炊き、炊き上がりは約400g(お茶碗2.5〜2.7杯)。ここからお茶碗1杯(150g)を取り分けます。

内訳 乾燥重量 食物繊維
押麦 約11.3 g 約1.38 g
白米 約56.3 g 約0.28 g
合計(1杯) 約1.7 g

同じ計算を白米だけのごはんでやると、1杯(150g)は乾燥米約68g相当なので約0.3gです。

つまり1杯あたりの差は約1.4g、1日3食で約4g。素材レベルでは24倍の差でしたが、食卓では「+1.4g」に落ち着きます。ここを正直に押さえておくことが、次の判断につながります。

1日の目標量と、届く割合

食物繊維の目標量は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で次のように定められています。2020年版から変更があった点に注意してください。

対象 目標量(1日)
男性 18〜29歳 20 g以上
男性 30〜64歳 22 g以上(2020年版は21g)
男性 65〜74歳 21 g以上
男性 75歳以上 20 g以上
女性 18〜64歳 18 g以上
女性 65〜74歳 18 g以上(2020年版は17g)
女性 75歳以上 17 g以上

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2020年版から何がどう変わったのか、鉄や骨粗鬆症を含む改定全体は「食事摂取基準2025年版の変更点」で整理しています。

3食すべてを雑穀米にした場合の上乗せは約4g。30〜64歳男性の目標22gに対して2割弱です。白米だけの場合と比べれば確実に前進しますが、主食だけで目標量に届く計算にはなりません。

主食は「土台を1〜2割底上げする手段」と位置づけ、残りは野菜・豆・海藻・きのこで積むのが現実的です。

落とし穴:目標量と八訂の数値は前提が違う

ここは多くの記事が触れていない重要な点です。

食物繊維の測定法は、七訂までのプロスキー変法から、八訂ではAOAC.2011.25法に変わりました。新しい方法では低分子量水溶性食物繊維と難消化性でん粉も測れるようになったため、多くの食品で成分値が上がっています(押麦もプロスキー変法では7.9g、AOAC法では12.2g)。

一方、食事摂取基準の目標量の根拠になった研究は、ほとんどが七訂相当の測定法による値で検討されています。そのため厚生労働省は、八訂を使って栄養計算をした場合、目標量と同等かやや超える値になっていても、生活習慣病予防の観点では不十分な可能性があると明記しています。

つまり、この記事の1.7gという数字も八訂ベースなので、やや多めに見えている可能性があるということです。「目標量を超えたから十分」と考えず、少し多めを狙うのが安全な読み方になります。

お腹の調子が変わったときは

雑穀米を始めて「ゆるくなった」「張る感じがする」という声は珍しくありません。多くは食物繊維の摂取量が急に増えたことが原因で、体が慣れると落ち着きます。

  • ゆるくなった:雑穀の量を半分に戻し、1〜2週間かけて段階的に増やす
  • お腹が張る:不溶性食物繊維が主体の雑穀を控え、水分をしっかりとる
  • 便秘が改善しない:食物繊維だけでなく水分と油分、そして運動量も見直す

食物繊維を増やすときは水分を一緒に増やすのが基本です。水分が足りないまま繊維だけ増やすと、かえって出にくくなることがあります。

腹痛が続く、症状が強いといった場合は、量の調整で様子を見ずに医療機関に相談してください。腹痛の原因については「雑穀米は危険?デメリット・腹痛の原因」で詳しく検証しています。

主食以外で食物繊維を積む

主食で4g上乗せしたうえで、残りをどう埋めるかです。組み合わせやすいものを挙げます。

  • 納豆1パック(40g):約2.7g
  • ゆで大豆50g:約4g前後
  • ごぼう(ゆで)50g:約3g
  • ブロッコリー(ゆで)70g:約3g
  • 干しひじき・乾燥わかめ:少量でも寄与が大きい

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

主食で約4g、納豆と野菜の副菜で5〜8g、汁物や果物で数g——この積み上げで目標量に近づきます。雑穀米はその第一段として、毎日自動的に効く手段です。

食物繊維を狙うときの雑穀の選び方

目的 選ぶ雑穀
とにかく量を増やしたい 押麦・もち麦(大麦)
水溶性もしっかり摂りたい 押麦・もち麦(大麦)
ミネラルも一緒に補いたい アマランサス(食物繊維7.4g+鉄9.4mg)
彩りも楽しみたい 赤米(6.5g)・黒米(5.6g)
グルテンを避けたい アマランサス・赤米・黒米(大麦は避ける)

大麦を避ける必要がある方は「雑穀米とグルテン」も参考にしてください。炊き方は「雑穀米の炊き方」にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 雑穀米の食物繊維はお茶碗1杯で何gですか?
A. 白米1合に押麦大さじ2を混ぜて炊いた場合、お茶碗1杯(150g)で約1.7gです。白米だけなら約0.3gなので、差は約1.4gになります。

Q. 雑穀米だけで1日の目標量は足りますか?
A. 足りません。3食すべて雑穀米にしても上乗せは約4gで、30〜64歳男性の目標22gに対して2割弱です。野菜・豆・海藻・きのこと組み合わせてください。

Q. 食物繊維がいちばん多い雑穀はどれですか?
A. 大麦(押麦・もち麦)です。乾燥100gあたり12.2gで、精白米の約24倍。しかも半分以上が水溶性食物繊維です。

Q. 雑穀米で便秘は改善しますか?
A. 食物繊維が増えることで整いやすくなる方はいますが、必ず改善するものではありません。水分・油分・運動もあわせて見直してください。改善しない場合は医療機関に相談を。

Q. 雑穀米でお腹がゆるくなるのはなぜですか?
A. 食物繊維の摂取量が急に増えたことが主な理由です。雑穀の量を半分に戻し、1〜2週間かけて段階的に増やすと落ち着くことが多いです。

Q. 成分表の食物繊維の数値が資料によって違うのはなぜですか?
A. 測定法の違いです。七訂まではプロスキー変法、八訂ではAOAC.2011.25法が使われ、後者では数値が高く出ます(押麦は7.9g→12.2g)。比べるときは同じ方法の値をそろえてください。

まとめ

雑穀米の食物繊維は、押麦を大さじ2混ぜたごはんでお茶碗1杯あたり約1.7g。白米だけの約5倍ですが、1日の目標量から見れば3食で2割弱です。「雑穀米にすれば足りる」ではなく「毎日自動的に1〜2割底上げできる」——この理解が正確です。

そして選ぶなら押麦・もち麦。総量が最も多いうえ、半分以上が水溶性という内訳の良さがあります。あとは副菜で積み上げてください。

なお、成分表の測定法が変わった影響で、八訂の数値は目標量の前提より高めに出ます。目標量ぴったりを狙うのではなく、少し多めを目指すのが安全です。

参考にした主な情報

[編集者プロフィール]
雑穀エキスパート / 雑穀アドバイザー / NESTA公認パーソナルフィットネストレーナー
フィットネストレーナーとして活動後、スポーツイベントの企画・運営に携わる。出産を機に「食」の大切さを見つめ直す中で雑穀と出会い、その栄養価と暮らしへの取り入れやすさに魅了される。日本雑穀協会の雑穀エキスパート・雑穀アドバイザーの資格を取得し、雑穀の魅力を分かりやすく伝えるべく専門メディア『雑穀十色』を立ち上げた。トレーナーとして培った身体づくりの知見と、日々の食卓に根ざした生活者の視点から、正確で実践しやすい雑穀の情報をお届けします。