アレルギー表示の特定原材料が9品目に|2026年4月の変更と雑穀への影響
この記事は2026年7月26日時点の情報にもとづきます。一次資料は消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」および「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成)です。
2026年4月1日、食品表示基準が改正され、カシューナッツが特定原材料に追加されました。表示義務のある品目は8品目から9品目になっています。
この記事は、アレルギーの診断や除去食の判断に代わるものではありません。診断や除去指導を受けている方は、必ず主治医の指示を優先してください。 ここで扱うのは「表示制度が何を保証し、何を保証していないか」という話です。
そのうえで結論を先に書きます。雑穀に関する構造は今回も変わっていません。 雑穀のうち表示義務があるのは「そば」だけで、大麦は義務にも推奨にも入りません。アレルギー表示欄だけを見ても、大麦入りかどうかは分からないままです。
この記事のポイント
- 2026年4月1日にカシューナッツが特定原材料に追加され9品目に。同時にピスタチオが推奨20品目へ加わった
- 根拠は約3年ごとの全国実態調査。カシューナッツの即時型症例は2011年調査の18件から2023年調査の279件へ増加
- 雑穀で表示義務があるのは「そば」だけ。消費者庁のハンドブックにも「大麦、ライ麦等は対象外」と明記されている
- 経過措置は「公布日から起算して2年間」と消費者庁資料にあるが、終期の具体的な日付は確認できていない
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2026年4月1日に何が変わったか
| 区分 | 位置づけ | 品目 |
|---|---|---|
| 特定原材料(9品目) | 表示義務 | えび・カシューナッツ・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ) |
| 特定原材料に準ずるもの(20品目) | 表示推奨 | アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・ピスタチオ・豚肉・マカダミアナッツ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン |
出典:消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成)
変わったのは2か所です。カシューナッツが「準ずるもの」から「特定原材料」へ移行し(推奨→義務)、空いた枠にピスタチオが追加されました。義務9品目・推奨20品目の合計29品目という構成です。ピスタチオの追加はカシューナッツとの交差反応性が背景にあります。
なぜカシューナッツが加わったのか
消費者庁は約3年ごとに全国実態調査(即時型食物アレルギー全国モニタリング調査)を行い、症例数と重篤度をふまえて対象を見直します。カシューナッツの即時型症例数は、2011年調査の18件から50件・82件・174件と増え、直近の2023年調査では279件。解析対象6,033件のうち4.6%で全体7位でした。ショック症例も5件から37件に増えています。
消費者庁は、症例数と割合の増加が一過性とは考えられないこと、そして公定検査法の確立の目途が立ったことの2つを理由に挙げています。表示を義務づけるには「検査で確認できること」も条件になる、という実務上の前提はあまり知られていません。
直近の他の変更
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 2023年3月9日 | くるみを特定原材料へ移行(7→8品目)。経過措置は2025年3月31日まで |
| 2024年3月28日 | 通知改正で準ずるものにマカダミアナッツを追加しまつたけを削除(20品目のまま) |
| 2026年4月1日 | カシューナッツを特定原材料へ移行(8→9品目)。ピスタチオを準ずるものへ追加 |
「まつたけの削除」は意外に見えますが、対象は症例数と重篤度で判断されるため減ることもあるという実例です。制度は積み上げではなく、調査のたびに入れ替わります。
雑穀への影響:構造は変わっていない
追加されたカシューナッツもピスタチオも木の実類で、雑穀ではありません。雑穀のうち表示義務があるのはそばの実(特定原材料の「そば」)だけ。大麦(押麦・もち麦)・はと麦・あわ・ひえ・きび・たかきび・黒米・赤米・緑米・キヌア・アマランサスは、いずれも義務にも推奨にも入りません。
大麦が対象外であることは明文で確認できる
推測ではありません。消費者庁のハンドブックは、特定原材料「小麦」の範囲についてこう書いています。
普通小麦、準強力小麦、デュラム小麦など全ての小麦と、それらから作られる各種小麦(強力小麦粉、準強力小麦粉、薄力小麦粉、デュラムセモリナ、特殊小麦粉など)が対象です。大麦、ライ麦等は対象外です。
つまり大麦は、小麦の枠にも入らず、独立した品目としても指定されていません。アレルギー表示欄に大麦は現れない、というのが制度上の帰結です。
日本と海外で「大麦」の扱いが違う
同じハンドブックには諸外国との比較表が載っており、ここに重要な違いがあります。
| 国・機関 | 「小麦/穀物」枠の範囲 |
|---|---|
| 日本 | 小麦のみ |
| CODEX(国際規格) | 小麦、ライ麦、大麦、えん麦、その交雑株 |
| EU・スイス | 小麦、ライ麦、大麦、えん麦又はこれらの交雑株 |
| カナダ | 小麦、ライ小麦、大麦、えん麦、ライ麦、その交雑株 |
日本以外の主要な制度では、大麦は穀物の枠に含まれて表示対象になっています。 海外製品の表示に慣れている方が日本の雑穀ミックスを見ると、この差で見落としが起こり得ます。なお大麦を避ける必要があるのはアレルギーとは別の文脈——セリアック病やグルテン関連疾患——であることが多く、その整理は「雑穀米とグルテン」で12種別に行っています。
そばは症例が少ないのに義務表示である
2023年調査でそばの即時型症例は68件(1.1%)で全体12位。鶏卵26.7%やくるみ15.2%と比べればごく少数です。それでも義務表示なのは、重篤な症状を呈するためとハンドブックに明記されています。特定原材料は症例数の多さだけでなく、症例数か重篤度のどちらかで選ばれます。そばは「調味料に含まれる場合もある」ため加工品まで細かく確認するよう注記もされています。
一方で、表示対象外は「症例ゼロ」を意味しません。 2018年度報告書のショック症例の集計には「オオムギ」が2件現れています。「表示義務がない=起こらない」ではない点は前提として押さえてください。
雑穀ミックスを買う人が実際にすべきこと
裏面のラベルをこの順に読んでください。
- アレルギー表示欄(または原材料名の後ろの括弧)を見る → 「そば」「小麦」があるか
- 原材料名の本体を読む → 「押麦」「もち麦」「丸麦」「米粒麦」「大麦」の記載を探す。この5つはすべて大麦です。1だけでは分かりません
- 対象品目数の記載を確認する → 「アレルゲン(29品目対象)」か「特定原材料のみ」かで、読み取れる範囲が変わります
- 注意喚起表示を読む → 「本品製造工場では○○を含む製品を生産しています」などの混入に関する記載
- 並び順を見る → 重量の多い順に書かれるため、何が主体のブレンドか分かります
制度上の限界も知っておくと判断が早くなります。最終製品でのたんぱく質量が数μg/g未満なら表示は免除されます。「入っているかもしれない」という可能性表示は禁止されているため、注意喚起は「製造しています」という事実の形をとります。そしてばら売り・量り売り・飲食店の食品は表示義務の対象外です。
そばの実入りブレンドの注意点や初めて食べるときの進め方は「雑穀米でアレルギーは出る?」、子どもに与える時期は「雑穀米は何歳から食べられる?」を参照してください。
いつから店頭の表示が切り替わるのか
制度が変わっても、店頭の商品が翌日に入れ替わるわけではありません。ここは確認できたことと、確認できていないことを分けて書きます。
- 確認できたこと:消費者庁の資料に「公布日から起算して2年間の経過措置を設ける」と明記されています。理由は、消費者への周知、事業者による原材料等の確認、容器包装の改版に時間が必要なためです
- 確認できていないこと:経過措置の終期にあたる具体的な日付は、執筆時点で消費者庁の公表資料からは確認できていません。 一次資料で確認できない日付は当サイトでは書きません
- 前例から言えること:2023年3月にくるみが移行した際は、2023年3月9日公布・同日施行で経過措置は2025年3月31日まで、つまり公布から約2年でした
したがって当面は、カシューナッツの表示がない加工食品が売られていても必ずしも違反ではないという前提で読む必要があります。カシューナッツアレルギーの方にとっては、表示だけに頼らず製造者に確認する期間が続きます。
この記事は一般的な情報の提供です。アレルギーの診断、原因食物の特定、除去の判断は必ず医師の指示に従ってください。食後にじんましん・唇やまぶたの腫れ・繰り返す嘔吐・強い腹痛が出た場合は医療機関に相談を、咳が止まらない・息苦しい・声がかすれる・ぐったりするといった症状がある場合は緊急性が高いため、すぐに救急対応を検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 特定原材料は何品目になりましたか?
A. 9品目です。えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)に、2026年4月1日にカシューナッツが追加されました。あわせて、表示が推奨される特定原材料に準ずるものが20品目あります。
Q. 今回の変更で雑穀の表示は変わりますか?
A. 変わりません。追加されたカシューナッツもピスタチオも木の実類で、雑穀ではありません。雑穀のうち表示義務があるのは「そば」だけという構造はそのままです。
Q. 大麦(押麦・もち麦)はアレルギー表示に出ますか?
A. 出ません。大麦は義務にも推奨にも入っておらず、消費者庁のハンドブックにも小麦の範囲について「大麦、ライ麦等は対象外です」と明記されています。原材料名から「押麦」「もち麦」「丸麦」「米粒麦」「大麦」の記載を自分で探す必要があります。
Q. カシューナッツの表示がない商品はいつまで売られていますか?
A. 消費者庁は公布日から起算して2年間の経過措置を設けるとしていますが、終期の具体的な日付は現時点で一次資料から確認できていません。前例のくるみでは公布から約2年でした。当面は表示だけに頼らず、製造者への確認が必要です。
Q. 表示義務がない雑穀ならアレルギーは起こりませんか?
A. そうとは言えません。表示制度は症例数と重篤度をふまえて対象を定めるもので、対象外の食品でアレルギーが起こる可能性を否定するものではありません。過去の調査では大麦のショック症例も報告されています。
まとめ
2026年4月1日の変更は、カシューナッツが特定原材料に追加されて9品目になったこと、ピスタチオが推奨20品目に加わったことの2点です。背景には、約3年ごとの全国実態調査で木の実類の症例が増え続けている事実があります。
一方で、雑穀を買う人にとっての実務は何も変わりません。 義務表示があるのは「そば」だけ。大麦は表示欄に現れない。だから表示欄と原材料名の両方を読む——この手順が引き続き必要です。日本では大麦が穀物の枠に入っていない一方、CODEXやEU・カナダでは表示対象に含まれます。同じ「アレルギー表示」でも国によって守備範囲が違う点は、輸入品と国産品を並べて買う場面で効いてきます。
制度は3年おきに動きます。次の全国実態調査の結果が出た時点で、この記事と関連記事を更新します。食事摂取基準の改定は「食事摂取基準2025年版の変更点」で扱っています。


