もち麦と押し麦の違い|どっちを選ぶ?食物繊維12.2gは押麦の値
「もち麦と押し麦、どっちがいいの?」——スーパーの雑穀コーナーで迷う定番の組み合わせです。
結論からお伝えすると、どちらも同じ「大麦」です。 そして混乱の原因は、この2つが別の軸の言葉だという点にあります。
- もち麦=でんぷんの性質による分類(もち性の大麦)
- 押し麦=加工の形による分類(蒸して平たく押しつぶした形)
つまり「もち性の押し麦」も存在します。対立する2択ではありません。
そのうえで栄養について正直に書くと、公的な成分表に収載されているのは「押麦」で、「もち麦」として独立した公的数値は見当たりません。 ネットで見かける「もち麦の食物繊維は◯g」という数値は、出典を確認する必要があります。
この記事のポイント
- もち麦=でんぷんの性質、押し麦=加工の形。分類の軸が違う
- 公的数値があるのは押麦(食物繊維12.2g/乾100g、うち水溶性約6.7g)
- もち麦の数値は商品の栄養成分表示で確認するのが確実
- 食感はもち性がもちもち、うるち性がプチプチ。炊き方はほぼ同じ
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混乱の原因は「2つの軸が混ざっている」こと
大麦を整理すると、次の2軸で説明できます。
軸1:でんぷんの性質(もち性 / うるち性)
お米の「もち米とうるち米」と同じ関係です。
| 性質 | 特徴 |
|---|---|
| もち性(もち麦) | アミロペクチンが主体。もちもち・粘りのある食感 |
| うるち性 | アミロースを含む。あっさり・粒感が残る食感 |
軸2:加工の形(押麦 / 丸麦 / 米粒麦)
| 形 | 加工 | 特徴 |
|---|---|---|
| 押麦(押し麦) | 蒸して平たく押しつぶす | 火が通りやすく、白米と一緒に炊ける。最も流通が多い |
| 丸麦 | 粒の形を残して精麦 | 食感がしっかり。スープや煮込みに向く |
| 米粒麦 | 米粒に似た形に加工(縦に切って溝を入れる) | 白米に混ざったときの見た目の違和感が少ない |
だから「もち麦の押し麦」もある
この2軸は独立しているため、組み合わせが存在します。
| もち性 | うるち性 | |
|---|---|---|
| 押麦の形 | もち麦の押麦 | うるち大麦の押麦(一般的な「押し麦」) |
| 丸麦の形 | もち麦の丸麦 | うるち大麦の丸麦 |
店頭で「もち麦」として売られているものは、押麦や丸麦に加工されたもち性の大麦です。そして「押し麦」として売られているものは、多くがうるち性の押麦です。
つまり実際の選択は「もち性の押麦 vs うるち性の押麦」であることが多く、違いはでんぷんの性質=食感にあります。大麦全体の基本情報は「大麦とは?栄養・効果・もち麦や押し麦との違い」で解説しています。
栄養:公的数値があるのは押麦だけ
ここが他のサイトとの一番の違いになる部分なので、正確に書きます。
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年に収載されている大麦の食品には「押麦」「米粒麦」などがありますが、「もち麦」という名称の独立した項目は見当たりません。
押麦(乾100g)の値は次のとおりです。
| 押麦(乾100g) | 値 |
|---|---|
| エネルギー | 329 kcal |
| たんぱく質 | 6.7 g |
| 脂質 | 1.5 g |
| 食物繊維総量 | 12.2 g |
| 水溶性(低分子量) | 2.4 g |
| 水溶性(高分子量) | 4.3 g |
| 不溶性 | 5.5 g |
| 難消化性でん粉 | 0.4 g |
| 鉄 | 1.1 mg |
| カルシウム | 21 mg |
| マグネシウム | 40 mg |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(食物繊維はAOAC.2011.25法)
食物繊維12.2gは精白米0.5gの約24倍。しかも水溶性が合計約6.7g=総量の半分以上です。食後血糖に関わるのは主に水溶性なので、「食物繊維が多い」だけでなく「水溶性が多い」点が大麦の強みです(「雑穀米と血糖値」)。
もち麦の数値はどう確認するか
もち麦は品種によってβ-グルカン含量に幅があります。 高β-グルカン品種の開発も進められており、「もち麦」と一括りにできる代表値を作りにくい状況です。
だから確認方法はひとつです。商品パッケージの栄養成分表示を見てください。
- 食物繊維は任意表示のため書かれていない商品もありますが、もち麦は繊維量を訴求点にすることが多く、記載されているケースが多いです
- β-グルカン量まで表示している商品は、機能性表示食品として届出されているものに多く見られます
- 表示がない商品については、押麦の値(12.2g)を目安として扱うのが無理のない考え方です
ネット上の「もち麦は食物繊維◯g」という数値を見たときは、それがどの資料の値なのかを確かめてください。 出典の書かれていない数値は、品種や測定法が不明なため比較に使えません。
なお「7.9gと12.2g」の食い違いにも理由がある
押麦の食物繊維が「7.9g」と書かれた資料もあります。これは誤りではなく測定法の違いです。七訂まで使われたプロスキー変法では総量7.9g、八訂で採用されたAOAC.2011.25法では低分子量水溶性食物繊維と難消化性でん粉も測れるため12.2gになります。比べるときは同じ方法の値をそろえる必要があります(「雑穀米の食物繊維」で詳しく解説しています)。
食感・味・使い勝手の違い
数値で差が出にくいぶん、実用面の違いが選択の決め手になります。
| 項目 | もち麦(もち性) | 押し麦(うるち性) |
|---|---|---|
| 食感 | もちもち・弾力がある | プチプチ・あっさり |
| 白米との一体感 | 粘りでなじむ | 粒感が残る |
| 味 | ほのかな甘み | 麦の香りが素直に出る |
| 冷めたとき | 硬くなりにくい | やや硬くなる |
| 価格 | やや高めの傾向 | 手に入りやすく安価 |
| 入手しやすさ | スーパーで一般化 | どこでも買える |
弁当やおにぎりに使うならもち麦が有利です。もち性のでんぷんは冷めても硬くなりにくいため、時間が経ってから食べる場面で差が出ます。
毎日の食卓で気軽に続けるなら押し麦です。価格が安く、あっさりした食感なので家族に受け入れられやすいという実用上の利点があります。
炊き方の違い(ほぼ同じ)
どちらも白米に混ぜる手順は共通です。
- 白米1合(150g)+大さじ1〜2(約12〜24g)
- 水を大さじ2〜4追加(麦大さじ1につき水大さじ2が目安)
- 通常の白米モードで炊く
押麦のほうが薄く加工されているため火が通りやすく、もち麦(とくに丸麦タイプ)は少し長めの浸水があると仕上がりが安定します。 30分〜1時間浸水させると芯が残りにくくなります。
はじめは大さじ1から。食物繊維が急に増えるとお腹がゆるくなることがあるため、慣らしながら増やしてください。詳しい炊き方は「雑穀米の炊き方完全ガイド」にまとめています。
どちらを選ぶか
| こんな人 | 選ぶなら |
|---|---|
| 弁当・おにぎりに使う | もち麦(冷めても硬くなりにくい) |
| もちもちした食感が好き | もち麦 |
| 価格を抑えて毎日続けたい | 押し麦 |
| あっさりした食感が好き | 押し麦 |
| 家族に麦が苦手な人がいる | 押し麦を少量から、または米粒麦 |
| 食物繊維の量を重視 | どちらでも可(表示を確認して比べる) |
| スープや煮込みに使う | 丸麦(もち性・うるち性どちらでも) |
迷ったら押し麦から。 安く手に入り、食感の変化も穏やかなので失敗しにくいです。そのうえで「もう少しもちもち感が欲しい」と思ったらもち麦に切り替える——この順番が無駄になりません。
なお、どちらも大麦なのでグルテンを避ける必要がある方はいずれも対象外です(「雑穀米とグルテン」)。その場合はキヌア・アマランサス・あわなどを選んでください。12種の比較は「雑穀の栄養比較」で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. もち麦と押し麦はどう違いますか?
A. どちらも大麦ですが、分類の軸が違います。もち麦はでんぷんがもち性であることを指し、押し麦は蒸して平たく押しつぶした加工の形を指します。「もち性の押し麦」も存在します。
Q. どちらのほうが食物繊維が多いですか?
A. 公的な成分表に収載されているのは押麦(12.2g/乾100g)で、もち麦として独立した公的数値は見当たりません。もち麦は品種による幅があるため、商品の栄養成分表示で確認してください。
Q. もち麦のほうが体に良いのですか?
A. 一概には言えません。どちらも大麦で、水溶性食物繊維β-グルカンを含みます。差が出るのは主に食感と価格です。
Q. 丸麦・米粒麦とは何ですか?
A. どちらも大麦の加工形態です。丸麦は粒の形を残したもの、米粒麦は米粒に似た形に加工したもので、白米に混ぜたときの見た目の違和感が少ないという特徴があります。
Q. 炊き方は違いますか?
A. ほぼ同じです。白米1合に大さじ1〜2、水を大さじ2〜4追加します。もち麦(とくに丸麦)は30分〜1時間浸水させると仕上がりが安定します。
Q. グルテンを避けたい場合はどちらを選べばいいですか?
A. どちらも大麦なので対象外です。グルテンを避ける食事では大麦も除去の対象になります。キヌア・アマランサス・あわなどを選んでください。
まとめ
もち麦と押し麦は対立する2択ではなく、「でんぷんの性質」と「加工の形」という別の軸の言葉です。実際の選択は「もち性の押麦 vs うるち性の押麦」であることが多く、違いは主に食感です。
栄養については、公的数値があるのは押麦(食物繊維12.2g、うち水溶性約6.7g)。もち麦は品種の幅があるため、商品の栄養成分表示で確認するのが確実です。出典の書かれていない数値は比較に使えません。
弁当やおにぎりに使うならもち麦、価格を抑えて毎日続けるなら押し麦。迷ったら押し麦から始めてください。


