雑穀のきほん

雑穀ができるまで|種まきから天日干しまでを写真で追う

雑穀ができるまで|種まきから天日干しまでを写真で追う

スーパーの棚に並ぶ雑穀は、すでに乾いて選別された「粒」の状態です。その粒が、畑ではどんな姿をしていたのか。穂がどのくらいの大きさで、どんな色で、いつ刈られるのか。調べようとしても、写真つきで通しで見られる資料はあまり多くありません。

この記事は、ひとつの畑の2024年の1シーズンを、月を追って写真で並べたものです。5月中旬に種がまかれ、9月上旬から刈り取りが始まるまで、およそ4か月。その間に畑で何が起きていたのかを、順番に見ていきます。

書いているのは、雑穀の栄養を数値で扱っている編集部です。数字だけを扱っていると、「その数字がどこから来ているのか」が抜け落ちます。畑の工程を知ることは、粒の値段や賞味期限、味の違いを理解する土台になります。

なお、あわ・きび・ひえといった雑穀は、白米のように大規模な機械化がしにくく、手作業の比重が大きい作物です。写真を並べると、そのことが工程の数としてそのまま見えてきます。

この記事のポイント

  • 種まきは5月中旬、刈り取りは9月上旬から。畑にある期間はおよそ4か月
  • 発芽してからしばらくは草との競争になり、穂が出るのは7月下旬
  • 刈った穂はすぐ食べられる状態ではなく、乾燥・脱穀・選別という工程が続く
  • 写真はすべて、ご協力いただいている雑穀農家さんからの提供です

この記事の写真について

掲載している写真は、すべてご協力いただいている雑穀農家さんからご提供いただいたものです。2024年の同じ畑で、種まきから乾燥までを通して撮影されています。

雑穀づくりの1年をざっと見る

撮影日から並べると、この畑の1年は次のようになります。

時期 畑で起きていること
5月中旬 畝を立てて種をまく
6月下旬 発芽。草丈は10〜20cmほど。雑草も同時に伸びる
7月下旬 出穂。穂が出そろい、青いまま垂れ始める
8月中旬〜下旬 登熟。穂が緑から褐色・金色へ変わる
9月上旬〜下旬 刈り取り
10月中旬 束ねて軒下に吊るし、天日で乾燥
乾燥後 脱穀・調製(穂から粒を外し、殻や茎を除く)

田植えと稲刈りの間が約5か月の水稲に比べると、畑にある期間は短めです。ただし「刈って終わり」ではないのがこの後の工程で、乾燥と脱穀に相応の時間がかかります。

5月・種をまく

手のひらに載せた雑穀の種。直径1.5mmほどの橙色の小粒

まず種です。写真に写っているのは、直径1.5mm前後の小さな粒。手のひらに載せると、思ったより軽く、量の割にかさばらないことがわかります。

同じ日に、色も大きさも違う別の種の写真も撮られています。この畑では複数の種類の雑穀を作付けしていることが、種の段階で見て取れます。

手のひらに載せた別の雑穀の種。淡い灰白色で、01の種より粒が大きい

まき方は、赤い手押しの播種機を押して、畝に筋状にまいていく方法です。機械の後ろにローラーが付いていて、まいた後の土を押さえながら進みます。

畑の畝の上を進む赤い手押し播種機のローラーと覆土板

雑穀の種は白米や大豆に比べてかなり小粒なので、深くまきすぎると出てきません。畝の表面をならして浅く落とす、というのがこの機械の役割です。

6月・芽が出て、草も伸びる

畝から立ち上がった雑穀の幼苗。イネ科の細い葉が数枚伸びている

種まきから約1か月後の6月下旬。畝に沿って、細い葉が10〜20cmほどに伸びています。イネ科らしい、まっすぐで先のとがった葉です。

畑全体を引きで見ると、畝の線がはっきり残っていて、その上に緑の点が等間隔に並んでいます。まだ地面のほうが目立つ状態です。

6月の雑穀畑の全景。畝の線に沿って幼苗が等間隔に並ぶ

そして、幼苗の足元をよく見ると、雑穀以外の草も一緒に伸びています。雑穀は初期の生育がゆっくりで、この時期は草に埋もれやすい時期にあたります。畑の写真としては地味な場面ですが、収量を左右するのはここです。

雑穀の幼苗の足元に雑草が混じって伸びている様子

7月・穂が出る

出穂したあわの穂。ブラシのように密な円筒形の穂が弓なりに垂れている

7月下旬になると、景色が一変します。草丈は人の背丈近くまで伸び、穂が出そろいます

穂の形は1種類ではありません。ブラシのように密で、弓なりに垂れる穂。これはあわの穂です。粒がびっしりと並んでいるのが、この距離でもわかります。

もうひとつは、房が枝分かれして垂れ下がる形。こちらはきびの穂です。写真の1枚には、垂れた穂にアマガエルが乗っている瞬間が写っています。畑が、作物だけの場所ではないことがわかる1枚です。

枝分かれして垂れ下がるきびの穂。葉の上にアマガエルが乗っている

引きで見ると、畝と畝の間に通路が残り、その両側に穂が並んでいます。背景には山と集落。雑穀は、こうした山あいの畑で作られてきた作物です。それぞれの特徴はあわ(粟)きび(黍)のページでまとめています。

7月の雑穀畑を引きで見たところ。畝の間に通路が残り、背景に山と集落が見える

8月・穂が色づく

褐色に色づいたあわの穂。粒が充実し、重みで大きく垂れている

8月に入ると、緑だった穂が褐色や金色に変わっていきます。粒が充実していく登熟の時期です。

穂の寄りの写真を見ると、粒のひとつひとつが膨らんで、穂全体が重みで大きく垂れているのがわかります。7月の穂が上を向きぎみだったのに対し、この時期の穂は明確に下を向いています。

この時期の写真には、支柱とロープが写り込んでいます。鳥に食べられるのを防ぐためのものです。粒が充実するほど狙われやすくなるので、収穫直前が最も気を使う時期になります。

色づいた雑穀の穂の奥に、鳥よけの支柱とロープが張られている

9月・刈り取る

刈り取り済みの地面と、まだ黄金色に立っている雑穀畑が画面で二分されている

9月上旬から刈り取りが始まります。9月下旬に撮られた写真では、画面の左半分が刈り取り済みの地面、右半分がまだ黄金色に立っている畑という状態で、収穫が数日〜数週間かけて進むことがわかります。

刈り取った穂は、袋にまとめて運ばれます。袋の中の写真を見ると、灰白色の穂が茎ごと重なっています。この時点ではまだ「粒」ではなく「穂」で、水分も多く含んでいます。

収穫袋に積み重なった灰白色の雑穀の穂。茎が付いたままの状態

ここで作業が終わらないのが雑穀です。この後、乾燥と脱穀という2つの工程が残っています。

10月・軒下で乾かす

木造の梁に吊るして天日で乾燥させている雑穀の穂の束と稲わらの束

10月中旬、刈り取った穂は束ねられ、木の梁に吊るされます。夕方の逆光で撮られた写真では、穂の輪郭が光を透かして縁取られています。

穂の束の隣には、稲わらの束も並んでいます。同じ場所で稲も作られていることがわかります。

夕日の逆光で輪郭が光る、乾燥中の雑穀の穂束の寄り

天日乾燥は、時間はかかりますが設備が要りません。保存できる状態にするには水分を落とす必要があり、その工程がここです。乾燥が不十分だとカビや虫の原因になります。乾かした後の保存については雑穀の賞味期限と保存方法で詳しく扱っています。

乾かした後・脱穀と調製

青いたらいに入った脱穀後の茎と殻。手作業で穂から実を外している

乾いた穂は、粒を外す作業に進みます。写真には、青いたらいを囲んで、複数の手が穂から実を外していく場面が写っています。

もう1枚には、穂を1本まるごとつまみ上げた状態が写っています。粒が穂軸にどう付いているのか、形がよくわかるカットです。

乾燥した雑穀の穂を1本つまみ上げたところ。粒が穂軸にどう付いているかがわかる

たらいの中には、外れた粒と一緒に、茎や殻の切れ端が大量に混じっています。ここから殻や異物を取り除いて、ようやく袋に入る粒になります。

この2枚だけは、他の写真より前の時期に撮影されています。前のシーズンに収穫した穂を調製している場面と考えられます。

写真から見えてくること

写真を時系列で並べると、いくつかはっきりすることがあります。

1つめは、工程の多さです。 種まき・除草・防鳥・刈り取り・乾燥・脱穀・調製と、それぞれに人の手が入ります。白米に比べて雑穀の価格が高い理由の一部は、ここにあります。価格の目安は雑穀米のコストで計算しています。

2つめは、1年に1度しか作れないことです。 5月に種をまき、10月に乾燥を終える。この畑の写真が2024年の1シーズンだけで途切れなく揃っているのは、そういうサイクルの作物だからです。

3つめは、粒の小ささです。 直径1.5mmほどの粒を、これだけの工程をかけて収穫します。その粒に、あわなら鉄が乾燥100gあたり4.8mg(精白米は0.8mg)、きびならたんぱく質が11.3g(精白米は6.1g)含まれています。数字だけを見ていると忘れがちですが、これは畑で4か月かけて作られたものです。

雑穀12種それぞれの姿と栄養は雑穀の種類一覧にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 雑穀は種まきから収穫まで何か月かかりますか?
A. 写真の畑では5月中旬に種をまき、9月上旬から刈り取りが始まっていました。およそ4か月です。ただし刈り取った後に乾燥・脱穀・調製の工程が続くため、袋に入る粒になるまではさらに時間がかかります。

Q. 雑穀は水田ではなく畑で育てるのですか?
A. あわ・きび・ひえ・たかきびなどは、水を張らない畑で育てる畑作物です。写真の畑も畝を立てた畑地でした。一方、赤米・黒米・緑米は稲の仲間なので水田で作られます。

Q. 雑穀の穂はどんな形をしていますか?
A. 種類によって違います。あわはブラシのように密な円筒形の穂が弓なりに垂れ、きびは房が枝分かれして垂れ下がります。写真ではこの2つの形をはっきり見分けられます。

Q. 刈り取った雑穀はすぐに食べられますか?
A. 食べられません。刈った直後は穂の状態で水分も多く、天日などで乾燥させてから、穂から粒を外す脱穀、殻や茎を取り除く調製という工程が必要です。

Q. 天日干しにはどんな意味がありますか?
A. 保存できる状態にするために水分を落とす工程です。乾燥が不十分だとカビや虫の原因になります。写真の畑では、束ねた穂を木の梁に吊るす方法がとられていました。

Q. この記事の写真はどこで撮影されたものですか?
A. ご協力いただいている雑穀農家さんの畑で、2024年に撮影されたものをご提供いただきました。産地や栽培方法については公開の同意をいただいていないため、記載していません。

まとめ

写真で追った雑穀の1年は、次の流れでした。

  1. 5月中旬に種まき。播種機で畝に筋状にまく
  2. 6月下旬に発芽。草丈10〜20cm、雑草との競争が始まる
  3. 7月下旬に出穂。あわときびで穂の形がはっきり違う
  4. 8月に登熟。緑から褐色へ。防鳥のロープが張られる
  5. 9月に刈り取り。数週間かけて進む
  6. 10月に天日乾燥。軒下に吊るす
  7. その後に脱穀・調製。ここでようやく粒になる

棚に並ぶ雑穀の粒は、この工程の最後にあるものです。種類ごとの特徴や選び方は雑穀の選び方ガイドで解説しています。

写真をご提供いただいた雑穀農家さんに、あらためて御礼申し上げます。

参考にした主な情報

[編集者プロフィール]
雑穀エキスパート / 雑穀アドバイザー / NESTA公認パーソナルフィットネストレーナー
フィットネストレーナーとして活動後、スポーツイベントの企画・運営に携わる。出産を機に「食」の大切さを見つめ直す中で雑穀と出会い、その栄養価と暮らしへの取り入れやすさに魅了される。日本雑穀協会の雑穀エキスパート・雑穀アドバイザーの資格を取得し、雑穀の魅力を分かりやすく伝えるべく専門メディア『雑穀十色』を立ち上げた。トレーナーとして培った身体づくりの知見と、日々の食卓に根ざした生活者の視点から、正確で実践しやすい雑穀の情報をお届けします。